ヨハネの黙示録第12章スタディーノート
ヨハネの黙示録12章『女と竜【イスラエル(ユダヤ)と悪魔(サタン)】の経緯について』
12:1~2 一人の女(イスラエル)
12:3~4 赤い大きな竜(悪魔(サタン))
12:5~6 男の子(メシア)
12:7~9 天での戦い
12:10~12 天に起こる声
12:13~16 イスラエルを迫害する竜
12:17~18 女の子孫の残りの者を迫害する竜
ヨハネの黙示録第12章スタディーノート
※ヨハネは、この章で悪魔(サタン)とイスラエルの戦いの歴史を振り返り、大患難時代に起こることを預言しています。
(1)一人の女(12:1~2)
『大きなしるしが天に現れた』とあるのは、『大いなるしるし』(口語訳)です。この『しるし』とは、「【主】がなさろうとしておられることの象徴」なのです。多くの場合、預言的内容が含まれます。
ここでの『しるし』とは、『ひとりの女』のことで、それは、天に現れましたが、それが象徴する出来事は地上で起こるのです。それは、『女は赤い竜によって苦しめられる。』ということです。
ヨハネの黙示録では、12:1以外に、『しるし』が6回現れています(12:3、13:13~14、15:1、16:14、19:20参照)。ヨハネの黙示録12:1の『しるし』は、『大いなる』という形容詞で他と区別されています。
『一人の女』の正しい解釈は、旧約聖書との関連から出て来ます。それによると、『一人の女』とは、「イスラエル」を指しています。旧約聖書では、イスラエルは『ヤハウェの妻』として描かれています(イザヤ54:5~6、エレミヤ3:6~8、31:32、エゼキエル16:32、ホセア2:16参照)。
『一人の女が太陽をまとい、月を足の下にし、頭に十二の星の冠をかぶっていた。(12:1)』とあるのは、創世記37:9~11によると、太陽はヤコブ、月はラケル、星はその息子たちを象徴しています。
一人の女はイスラエルであり、女の姿は、メシア的王国でのイスラエルの栄光に満ちた姿を預言しているのです。
(注)「一人の女」について、置換神学の立場は、「大患難時代の教会のこと」だと言います。これでは、教会は大患難時代の間、地上に存在することになり、整合性がとれなくなります。事実は、教会がキリストを生んだのではなく、その逆なのです。
(注)カトリック教会の見解では、「一人の女」は、イエスを生んだマリアのことだと言います。また、カトリックはマリアの無痛分娩を主張していますが、「一人の女」は陣痛を経験していますので、整合性がとれません。
イスラエルがメシアを生み出す前の状況を描写しています。イスラエルのメシア誕生の前に数々の苦難を経験した歴史が回顧されています。
(2)赤い大きな竜(悪魔(サタン))(12:3~4)
『別のしるし』とは、『炎のように赤い大きな竜』で、もう少し、先に行くと、赤い竜が悪魔(サタン)の象徴だということが明らかになります。『赤』は、血を流すのが好きな悪魔(サタン)の性質を表していると考えられています。
『七つの頭と十本の角を持ち、その頭に七つの王冠をかぶっていた。』とありますが、これは、異邦人の時代における最後の悪魔(サタン)が支配する世界帝国の姿です。獣の形状については、ヨハネの黙示録13章に詳述されます。
悪魔(サタン)は、自分の支配下にあるすべての悪霊を動員し、メシアの業を妨害します。『天の星の三分の一』とは、堕天使の数で、悪霊の数でもあります。天使の三分の一が、悪魔(サタン)と共に堕落しました。また、悪魔(サタン)は、メシア誕生に際して、悪霊どもを一箇所に召集したことがあります。
『竜は、子を産もうとしている女の前に立ち、産んだら、その子を食べてしまおうとし』、とあるのは、その子をすぐに破壊するためです。これは、ベツレヘムの起きたことへの言及です。メシアであるイエスが誕生した時に、ベツレヘムの2歳以下の男の子がすべて殺されました。竜は、当時の覇権国ローマ帝国(悪魔(サタン)に支配されている)で、ヘロデ大王は、ローマ帝国の手先として動いたのです。
(3)男の子(メシア)(12:5~6)
『女は男の子を産んだ』とは、イスラエルはメシアを産んだということです。メシアは選びの民アブラハム、ヤコブ、イサク…ダビデを経由した正統な系図から出現したのです。
ここから、メシアの誕生からメシアの昇天まで一挙に飛んでいます。
『鉄の杖をもってすべての国々の民を牧することになっていた。』とありますが、他の翻訳では以下のようになっています。
『治めることになっていた』(新共同訳)
『治めるべき者である』(口語訳)
これは、詩2:9の預言の成就です。
『その子は神のみもとに、その御座に引き上げられた。』とは、国々を統治する前に、天に引き上げられるということで、『メシアの昇天のこと』を指します。
(注)この「男の子」を教会と解釈する人がいますが、イスラエルが教会を産んだわけではなく、また、教会はキリストの花嫁(女性形)であって男の子ではないのです。さらに、教会の使命は国々を統治することではないので、整合性がとれません。
ここから、場面は大患難時代に移行します。その時、イスラエルは、荒野に逃げます。そこには、【主】によって備えられた場所があり、そこで1260日(三年半)の間、守られます。
イスラエルが荒野に逃げるタイミングは、大患難時代七年の中期で、反キリストがイスラエルとの契約を破棄し、自分を神と宣言し、反キリストの像を神殿に置きます(2テサロニケ2:4)。その時に、マタイ24:16の預言がイスラエルを保護するのです。そこは、ボツラ=ペトラ(大患難時代の天幕)です。
『2:4 不法の者は、すべて神と呼ばれるもの、礼拝されるものに対抗して自分を高く上げ、ついには自分こそ神であると宣言して、神の宮に座ることになります。(2テサロニケ2:4)新改訳2017』
『24:16 ユダヤにいる人たちは山へ逃げなさい。(マタイ24:16新改訳2017)』
ミカ2:12~13参照
12章5節と6節の間には、長い時間の経過があります。復活後のイエスの昇天から大患難時代の中間までです。教会時代は、この間に過ぎ去っています。
「二重言及の法則」に留意する必要があります。同じテーマであれば、時間の経過を無視して列挙されます。旧約聖書のメシア預言は、初臨と再臨が続けて預言されていますので、混同しないように注意が必要なのです。
(4)天での戦い(12:7~9)
『天に戦いが起こって』とあるのは、大患難時代の中間期に起こる戦いです。まず、天には三つの種類、「第一の天(鳥が飛ぶ空間)」「第二の天(星が存在する宇宙空間)」「第三の天(神が隣在される超自然の空間)」があります。
ここでは、第三の天で『ミカエルとその御使いたち』と『竜とその使いたち』の戦いが起こっているのです。
『ミカエルとその御使いたち』は、ミカエルと聖なる御使いたちです。ミカエルは、イスラエルの守護天使でもあります。ダニエル12:1とヨハネの黙示録12章は、同じ内容の預言です。
『12:1 その時、あなたの国の人々を守る大いなる君ミカエルが立ち上がる。国が始まって以来その時まで、かつてなかったほどの苦難の時が来る。しかしその時、あなたの民で、あの書に記されている者はみな救われる。(ダニエル12:1新改訳2017)』
『竜とその使いたち』とは、悪魔(サタン)と悪霊どもです。
戦いの結果は、ミカエルと聖なる御使いたちが勝ち、悪魔(サタン)と悪霊どもは天にいることができなくなります。
それまでは、悪魔(サタン)は「第三の天」に上ることができていたのです。ヨブ記1章では、悪魔(サタン)は「第三の天」に上り、ヨブを糾弾しています。
大患難時代の中間期には、悪魔(サタン)と悪霊どもは地上に投げ落とされます。それにより、悪魔は、自分に残された時間が3年半しかないことを悟るのです。それが、地上においてイスラエルに猛攻撃を仕掛ける理由です。
悪魔は、『巨大な竜』『古い蛇』『サタン』『全世界を惑わす者』などとも呼ばれます。
(5)天に起こる声(12:10~12)
『大きな声が天でこう言うのを聞いた』というこの声が誰の声なのか、明確ではありません。「神の声」でもなく、「御使いたちの声」でもなく、「二十四人の長老たちの声」でもなく、「大患難時代の殉教者たちの声」でもないようです。
『私たちの兄弟たちの告発者』とありますから、この声は、大患難時代の殉教者たちの声だと推察できます。この殉教者たちは、最終的な勝利を待ち望んでいるのです。彼らの喜びの理由は、信仰者を【主】の御前で訴えている悪魔(サタン)が天から投げ落とされたからなのです。
『今や、私たちの神の救いと力と王国と、神のキリストの権威が現れた』とあるのは、その声は、「四つのことが現れた」ことを喜んでいるのです。
①『私たちの神の救い』…罪責からの解放のことではなく、【主】の計画の成就を意味しています。
②『力』…神の計画の成就をもたらす神の力です。
③『国』…メシア的王国(千年王国)の成就が近いということです。
④『神のキリストの権威』…メシア的王国を統治するキリストの権威のことで、詩2:2の成就なのです。
霊的戦いに勝利するための武器は、『子羊の血…信じる者の罪を赦し、清くします。』、『あかしのことば…サタンの嘘に打ち勝つことばであり、それは十字架のことばです。』、『全き献身…自分の命よりもキリストを証言することを重視しました。それは、スミルナの教会に与えられて命令に従った(ヨハネの黙示録2:10)。』という、この3つです。
天での声は続けて『天とそこに住む者たちよ、喜べ』と言います。さらに、『地と海はわざわいだ。悪魔が自分の時が短いことを知って激しく憤り、おまえたちのところへ下った』からと、天から地に落とされた悪魔が、自分の時が短いことを知り、激しく怒る予告をしています。
大患難時代における裁きは、【主】がもたらすものですが、苦難(殉教の死)は、悪魔(サタン)がもたらすものなのです。
(6)イスラエルを迫害する竜(12:13~16)
ここから、ヨハネの黙示録12:6とヨハネの黙示録13:13が繋がります。つまり、ヨハネの黙示録12:7~12は、挿入箇所なのです。
天から地上に投げ落とされた悪魔(サタン)は、ただちにイスラエルを攻撃します。悪魔(サタン)がイスラエルを憎むのは、イスラエルの性質のゆえではなく、【主】の計画の中でイスラエルが果たす役割のゆえに、憎み、妨害しようとするのです。
『女には大きな鷲の翼が二つ与えられた』とあるのは、『鷲の翼』は、イスラエルを守る【主】の力と忠実さを示す比ゆ的言葉です。これは、出エジプト19:4や申命記32:11に出てくる表現です。
『19:4 「あなたがたは、わたしがエジプトにしたこと、また、あなたがたを鷲の翼に乗せて、わたしのもとに連れて来たことを見た。(出エジプト19:4新改訳2017)』
『32:11 鷲が巣のひなを呼び覚まし、そのひなの上を舞い、翼を広げてこれを取り、羽に乗せて行くように。(申命記32:11新改訳2017)』
荒野とは、ヨルダン川の東にある山地(ボツラ=ペトラ)のことを指しています。イスラエルは、荒野で大患難時代の後半三年半の間、【主】によって養われるのです。「一時と二時と半時の間」とは、三年半の期間です。そこには、創造主である神【主】の超自然的守りがあるのでしょう。
1列王17:5には、預言者エリヤの例が示されています。
『蛇はその口から、女のうしろへ水を川のように吐き出し、彼女を大水で押し流そうと』とあるのは、洪水が比ゆ的言葉として用いられていて、大軍がイスラエルの後を追ってくるということを意味しています。
『地は女を助け、その口を開けて、竜が口から吐き出した川を飲み干した』とは、神の超自然的な介入を示す比ゆ的言葉です。
(7)女の子孫の残りの者を迫害する竜(12:17)
悪魔(サタン)は、攻撃の的を『女の子孫の残りの者』に絞っていきます。『神の戒めを守り、』『イエスの証しを堅く保っている者たち』をターゲットにするのです。その攻撃の内容はヨハネの黙示録13章に記されています。
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