ヨハネの黙示録第16章スタディーノート

(1)第一の鉢の裁き(16:1~2)
 大患難時代における裁きは、『七つの封印の裁き(6章)』からはじまり、『第七の封印の裁きが七つのラッパの裁き(8:6~9:21)』と続きます。そして、『第七のラッパの裁きが七つの鉢の裁き(16章)』となります。
 『大きな声が神殿から出て』とあるのは、【主】ご自身の声です。次のヨハネの黙示録15:8の内容から、そこには『【主】なる神』しかおられない状況だからです。

『15:8 神殿は、神の栄光とその御力から立ち上る煙で満たされ、七人の御使いたちの七つの災害が終わるまでは、だれもその神殿に入ることができなかった。(ヨハネの黙示録15:8新改訳2017)』

 『大きな声』は、その内容が重要で緊急性のある宣言であることを示しています。
 『七人の御使いに、「行って、七つの鉢から神の憤りを地に注げ」』と、裁きの実行を命じます。この七つの鉢の裁きは、短時間の内に連続して起こるのです。そして、先に行くほど裁きの厳しさが増すのです。
 第一の鉢の裁きは、反キリストに従う人たちへの裁きです。この時点では、地上の人たちの大半が、反キリストに従っていることでしょう。その彼らに、悪性のはれものができるのです。ヨハネの黙示録14:9~11が成就しはじめています(獣を拝む者たちへの警告)。

『14:9 また、彼らの後にもう一人、第三の御使いがやって来て、大声で言った。「もしだれかが獣とその像を拝み、自分の額か手に刻印を受けるなら、
14:10 その者は、神の怒りの杯に混ぜ物なしに注がれた、神の憤りのぶどう酒を飲み、聖なる御使いたちと子羊の前で火と硫黄によって苦しめられる。
14:11 彼らの苦しみの煙は、世々限りなく立ち上る。獣とその像を拝む者たち、また、だれでも獣の名の刻印を受ける者には、昼も夜も安らぎがない。」(ヨハネの黙示録14:9~11新改訳2017)』

 第一のラッパの裁き(默8:7)と対比すると、第一のラッパの裁きでは、木の三分の一が焼け、青草が全部焼けてしまったのに対し、第一の鉢の裁きでは、反キリストを拝む者たちが悪性の皮膚病で撃たれるのです。
 エジプトに下った第六の裁き(出9:9~11)と対比すると、エジプト人は『うみの出る腫物』で打たれました。ヨハネの黙示録16:2の「はれもの」は、ギリシャ語で「ヘルコス」が使われていて、出エジプト9:9の「腫物」も、「ヘルコス」(七十人訳聖書)が使われているのです。

(2)第二の鉢の裁き(16:3)
 『海は死者の血のように』なり、『海の中にいる生き物はみな死んだ』とありますが、このようになると、耐えられないほどの異臭が立ち上ることでしょう。
 第二のラッパの裁き(黙8:8~9)と対比すると、第二のラッパの裁きは、『海の3分の1が血になり』『海の中の生物の3分の1が死んだ』とありますが、第二の鉢の裁きでは、全滅です。
 エジプトに下った第一の裁き(出7:17~21)では、ナイルの水が血に変わりました。赤潮などでも水面が赤くなり悪臭が立ちこめますが、実際に血に変わるとは、どのような状況か想像もつきません。

(3)第三の鉢の裁き(16:4~7)
 今度は、川と泉の水が血になる。これにより、飲料水がなくなるので、生存が脅かされることになります。
 第二と第三の鉢の裁きで、地上の水はすべて血に変わります。これは、人類の生存は不可能な環境になるということです。そして、キリストの再臨が近づいたということの示唆でもあります。
 『水をつかさどる御使い』とは、御使いには、自然界のある部分の管理が委ねられていて、水を担当している御使いを指します。

『7:1 その後、私は四人の御使いを見た。彼らは地の四隅に立ち、地の四方の風をしっかりと押さえて、地にも海にもどんな木にも吹きつけないようにしていた。(ヨハネの黙示録7:1新改訳2017)』

『14:18 すると、火をつかさどる権威を持つ別の御使いが祭壇から出て来て、鋭い鎌を持つ御使いに大声で呼びかけた。「あなたの鋭い鎌を送って、地のぶどうの房を刈り集めよ。ぶどうはすでに熟している。」(ヨハネの黙示録14:18新改訳2017)

 この御使いが、神の義が成ったと神をほめたたえます。
 『彼らは聖徒たちや預言者たちの血を流しましたが、あなたは彼らに血を飲ませられました。彼らにはそれがふさわしいからです。』は、聖徒たちの血を流した者たちが、血を飲むようになるのは当然であるというものです。大患難時代の裁きは、神の義の成就でもあるのです。
 『祭壇がこう言うのを聞いた』とあるのは、祭壇の擬人化です。また、水をつかさどる御使いに同意しているのは、大患難時代の殉教者たちなのです。

『6:9 子羊が第五の封印を解いたとき、私は、神のことばと、自分たちが立てた証しのゆえに殺された者たちのたましいが、祭壇の下にいるのを見た。
6:10 彼らは大声で叫んだ。「聖なるまことの主よ。いつまでさばきを行わず、地に住む者たちに私たちの血の復讐をなさらないのですか。」(ヨハネの黙示録6:9~10新改訳2017)』

(4)第四の鉢の裁き(16:8~9)
 太陽の熱が上昇します。この時、飲み水がない上に、太陽が激しく照りつけるのです。人々は、耐え難いほどの苦しみを経験します。『人々』は「the people」で、16章2節、6節と同じ人たちです。
 しかし、キリストを信じる者たちは、この裁きを免れるのです。
 第四のラッパの裁き(默8:12)と対比、第四のラッパの裁きでは、光が制限され、生存に適した地球環境が激変します。第四の鉢の裁きでは、人々は激しい炎熱で焼かれ苦しむのです。

『8:12 第四の御使いがラッパを吹いた。すると太陽の三分の一と、月の三分の一、また星の三分の一が打たれたので、それらの三分の一は暗くなり、昼の三分の一は光を失い、夜も同じようになった。(ヨハネの黙示録8:12新改訳2017)』

 それでも、これほどの苦難も、人々を悔い改めには導かないようです。人々は、神の御名を汚すようなことを言い、冒涜するのです。

(5)第五の鉢の裁き(16:10~11)
 第五の鉢の裁きでは、反キリストが支配する世界である『獣の国』を闇が覆い、この暗黒には痛みが伴います。『人々』とは、反キリストに従う人々です。
 エジプトに下った第九の災害(出10:21~23)と対比すると
『10:21 【主】はモーセに言われた。「あなたの手を天に向けて伸ばし、闇がエジプトの地の上に降りて来て、闇にさわれるほどにせよ。」
10:22 モーセが天に向けて手を伸ばすと、エジプト全土は三日間、真っ暗闇となった。
10:23 人々は三日間、互いに見ることも、自分のいる場所から立つこともできなかった。しかし、イスラエルの子らのすべてには、住んでいる所に光があった。(出10:21~23新改訳2017)』
 エジプトに下った第九の災害の時には、イスラエル人の住む所(ゴシェンの地)は例外でした。

 ダニエル11:41によれば、反キリストの支配を免れる場所を三つ上げています。それは、エドム、モアブ、アモンです。ユダヤ人たちが逃れる大患難時代の天幕の場所です。そこには【主】の光があるのです。
 これほどの苦難にあいながらも、罪人たちは悔い改めようとはしないのです。

(6)第六の鉢の裁き(16:12~16)
 『第六の御使いが鉢の中身を大河ユーフラテスに注いだ、すると、その水は涸れてしまい』とあります。
 ユーフラテス川の源流は、トルコ北東部の山地で、途中シリアを通過し、イラクでチグリス川と合流してペルシャ湾に注ぐ全長約3000㎞弱の国際河川です。古代都市ウルやバビロンは、この川のほとりにありました。また、この川は、古代ローマ帝国の東の境界線になっていました。
 そして、聖書預言では、約束の地の「東の境界線」になっています。

『15:18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで言われた。「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える。エジプトの川から、あの大河ユーフラテス川まで。(創15:18新改訳2017)』

『1:7 あなたがたは向きを変えて出発せよ。そしてアモリ人の山地に、またそのすべての近隣の者たちの地、すなわち、アラバ、山地、シェフェラ、ネゲブ、海辺、カナン人の地、レバノン、さらにあの大河ユーフラテス川にまで行け。(申1:7新改訳2017)』

『1:4 あなたがたの領土は荒野からあのレバノン、そしてあの大河ユーフラテス川まで、ヒッタイト人の全土、日の入る方の大海までとなる。(ヨシュア1:4新改訳2017)』

 大河ユーフラテスが涸れたことにより『日の昇る方から来る王たちの道を備えることに』なり、反キリストの軍勢が侵攻してくるのが可能になるのです。
 ここから、ユダヤ人を抹殺するための戦いがはじまります。彼らは、キリストの再臨を妨害するためにユダヤ人を滅ぼそうとするのです。

(注)「日の昇る方から来る王たち」とは誰か?について、ある学者は、100以上の注解書を調べ、50以上の説があるのを発見したといいます。
 字義通りに読めば、『東の方から来る王たち』です。聖書が『東』という場合は、極東(中国)ではなくメソポタミアを意味します。
 さらに、反キリストの国の首都は、バビロンであることを合わせて考えると、ユーフラテスより東の国々の王たちが、川が枯渇するという奇跡に助けられて進軍してくるのです。
 イスラエルに対する戦いを計画しているのは、偽の三位一体です。それは、『①竜(悪魔(サタン))、②獣(反キリスト)、③偽預言者』です。
 ヨハネは、彼らの口から、『蛙のような三つの汚れた霊が出て来るのを見た』と証言しています。これは、汚れた霊で、『かえるのような』とあるのは、儀式的に汚れているからです【レビ11:9~12、41参照(水の中にいて、ひれやうろこのないもの)】。
 そして、『三つの汚れた霊』は、偽の三位一体の命令を実行するのです。
 『三つの汚れた霊』の活動は、『しるしを行う』ことですが、これは、質的に悪い奇跡です。全世界の王たちが水不足、猛暑、皮膚病で苦しんでいる中で、その王たちを助けるためには、しるしが必要なのです。
 『大いなる日の戦い』のために、全世界の王たちを招集します。この戦いが、ハルマゲドンの戦いです。

『 ──見よ、わたしは盗人のように来る。裸で歩き回って、恥ずかしい姿を人々に見られることのないように、目を覚まして衣を着ている者は幸いである──』は、挿入句です。
 これは、主イエスへの信仰を捨てない人たちへの励ましの言葉であり、語っているのは、【主】ご自身なのです。
 『わたしは盗人のように来る』とは、『予期せぬ時に、突然来る。』という意味です。多くの人々は、まだ準備ができていないでしょうから、霊的な目を覚まし続ける必要があるという警鐘でもあります。
 『裸で歩き回って、恥ずかしい姿を人々に見られることのないように、目を覚まして衣を着ている者は幸い』とあるのは、紀元1世紀の読者には、この言葉の意味がよく理解できたのでしょうけれど、時代も場所も変われば、少々の説明を必要とします。その当時、番兵は、任務中に寝ているのが見つかると、「着物を脱がされ」「見せしめのために、裸で歩かされ」る罰を受けたのです。これは、霊的に目を覚まし続ける者は、祝福を受けるという約束なのです。
 反キリストの軍勢が集結する場所は、ハルマゲドンです。これは、『メギドの山(丘)』という意味です。位置的には、イズレエル平原の西端にある山で、イスラエルで一番面積が広いからです。ここは戦いの場ではなく、反キリストの軍勢が集結する場所なのです。

(7)第七の鉢の裁き(16:17~21)
 『大きな声』とは、【主】の声で神殿の中から、鳴り響きます。
 『事は成就した』とあるのは、ギリシャ語で一語で、「ゲゴネン」(ギノマイ)が使われていて、最後の裁きを紹介する言葉であり、完了形です。「神の怒りの裁きは、すべて行われ、神の怒りは、すべて取り去られた」という意味です。
 この第七の鉢の裁きが最後ということです。『キリストの再臨の前に起こることは、すべて完了する』と言うことです。

 この時、歴史上なかったほど大きな地震が起こります。
 ヨハネの黙示録の記事で、地震が起きるのは、①黙6:12(第六の封印)、②黙8:5(第七の封印)、③黙11:13(二人の証人の召天)、④黙11:19(第七のラッパ)です。
 この地震で、エルサレムは、三つに裂かれます。これは、千年王国のために再建される地形変化でもあります。

『14:4 その日、主の足はエルサレムの東に面するオリーブ山の上に立つ。オリーブ山はその真ん中で二つに裂け、東西に延びる非常に大きな谷ができる。山の半分は北へ、残りの半分は南へ移る。(ゼカリヤ14:4新改訳2017)』
 また、世界中の地形が激変します。これもまた、千年王国設立への準備なのです。
 一タラント(約34~54㎏)の重さの大きな雹が降って来ます。これは、「神の怒りがここに極まる」と言う意味です。それでも人々は、神をののしる言葉を口にするのです。裁きが激しくなっても、人々の心は頑ななままの状態の人が多いようです。

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