ミレトからツロへ 使徒の働き21:1-6

『21:1 私たちは、彼らと別れて船出した。コスに直航し、翌日ロドスに着き、そこからパタラに渡った。
21:2 そこにはフェニキア行きの船があったので、それに乗って出発した。
21:3 やがてキプロスが見えてきたが、それを左にして通過し、シリアに向かって航海を続け、ツロに入港した。ここで船は積荷を降ろすことになっていた。
21:4 私たちは弟子たちを探して、そこに七日間滞在した。彼らは御霊に示されて、エルサレムには行かないようにとパウロに繰り返し言った。
21:5 滞在期間が終わると、私たちはそこを出て、また旅を続けた。彼らはみな、妻や子どもたちと一緒に町の外まで私たちを送りに来た。そして海岸でひざまずいて祈ってから、
21:6 互いに別れを告げた。私たちは船に乗り込み、彼らは自分の家に帰って行った。 使徒の働き21:1-6新改訳2017』

エルサレムへの旅に臨むパウロの心中と霊的教訓を考えていきましょう。

1節では、ミレトからコス、ロドス、パタラへ移動します。ミレトからコスは小型船で、沿岸地帯を航行するのが一般的でした。定期船の可能性もありますが、パウロがこの船をチャーターした可能性も考えられています。当時、小型船の場合は、海岸沿いを航行し、夜になると港に停泊したようです。
コスは、ミレトから約65キロ南にある島で、「ヒポクラテスの誓い(医師の倫理・任務などについてのギリシア神への宣誓文)」で有名なヒポクラテス誕生の地でもあります。ここには、医学校があったと伝えられています。

そして、コス島からロドス島へ移動します。ロドス島にある主要都市の名前がロドス(バラの花(Rose)という意味)です。コス島からロドス島へは、約140キロの航海です。ここは、コスモポリタンの町でした。

世界の七不思議は、「ギザのピラミッド」「バビロンの空中庭園」「エペソのアルテミス神殿」「オリンピアのゼウス像」「ハリカルナッソスのマウソロス霊廟」「ロドス島の巨像」「アレクサンドリアの大灯台」など挙げられますが、この中にも含まれる不思議な島です。

この「ロドス島の巨像」は、紀元前3世紀頃に建造されたと伝わり、太陽神ヘリオスをかたどった彫像で、両足を広げて立つ灯台です。全長34m、台座まで含めると約50m(自由の女神像に匹敵する大きさ)でした。ヘリオスは、同じ太陽神のアポロン(ローマ名アポロ)と混同されたため、「アポロの巨像」とも呼ばれます。パウロの時代には、この像は壊れていました。ロドスは、有名な商業都市でした。

さらに、ロドス島からパタラへ移動します。ロドス島から約95キロ東に航海するとパタラの港に着きます。ミレトからパタラまでは、3日間で移動できた距離です。ここまでは、内海を航海する小型船での移動でした。何百という船が、この航路を往き来していたのです。

2~3節は、パタラからツロへ移動です。パタラで大型船に乗り換えることができました。ここから約640キロ先のツロ(ティルス)に直行する船便です。おそらくこの船は、穀物か果物を運ぶ輸送船だと考えられています。これは、地中海を横断する5日間の船旅です。

このフェニキアは、シリアの海岸地帯のことです。その中心都市が、商業都市のツロ(ティルス)で、現在のレバノンに当たります。当時の船旅は、目的地に向かう船を見つけ、それに乗るしかなかったのです。

この船は、キプロス島の南側を航行しました。このキプロス島は、バルナバの故郷で第一次伝道旅行の最初の訪問地でした。パウロにとっては、思い出深い地でしたが、今回はそこには立ち寄りませんでした。

船荷を降ろすため、ツロで船が停泊しました。パウロは先を急いでいましたが、自分で予定を組むことはできませんでした。それで、トロアスで7日間、ツロで7日間滞在する事になりました。しかしパウロは、船が停泊する日数を有効に活用したのです。

4~6節は、ツロの弟子たちとの交わりがそれです。私たちとは、パウロと8人の同行者たちで、その中にルカも含まれて合計9人いました。

彼らは、ツロの弟子たち(信者たち)を探しました。ツロに教会が出来ていて、その設立には、パウロも間接的に関わっていたのです。使徒の働き11:19に記されているのは、ステパノが殉教死した後、散らされた信仰者が、キプロスにも流れてきていたのです。

パウロによる教会の迫害が、伝道の拡大につながったという事です。創造主である神【主】の御業は、実に不思議な結果を生み出すのです。これは、パウロにとっては慰めとなった事でしょう。この時、立場を180度変えたパウロと一行は、ツロの信者たちと7日間交わりを持つことができました。

旅の途上にある兄弟たちをもてなすのは、信者の務めであり、当時の安宿に泊まるよりも、はるかに安全で快適だった事でしょう。

「彼らは御霊に示されて、エルサレムには行かないようにとパウロに繰り返し言った。」とあるのは、御霊がエルサレムに上ることを禁じているという意味ではありません。御霊は、ツロの信者たちにも、エルサレムで危険が待っていることを啓示したのです。これは、それまでにパウロに示されていた内容と同じです。

信者たちは、パウロの身の上を案じ、エルサレムに上らないように忠告しました。御霊の示しは、迫害への準備をするようにという、パウロに対する警告だったのです。

パウロの確信は、エルサレムに上ることが【主】の御心でした。危険が待っているので、あらゆる準備をする必要があるのです。

船が出帆する時が来ました。この場面は、ミレトの海岸での祈りほど劇的でないとしても、それでも感動的です。信者たちは妻子をともない、町外れまで見送りに来ました。パウロの一行は、彼らとともに海岸にひざまずいて祈り、別れを告げたのです。このたった1週間で、深い信頼関係が生まれていたのです。

パウロの一行は船に乗り、信者たちは家に帰って行ったのです。

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