自称祭司長スケワの息子たち 使徒の働き19:13-20
『19:13 ところが、ユダヤ人の巡回祈祷師のうちの何人かが、悪霊につかれている人たちに向かって、試しに主イエスの名を唱え、「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる」と言ってみた。
19:14 このようなことをしていたのは、ユダヤ人の祭司長スケワという人の七人の息子たちであった。
19:15 すると、悪霊が彼らに答えた。「イエスのことは知っているし、パウロのこともよく知っている。しかし、おまえたちは何者だ。」
19:16 そして、悪霊につかれている人が彼らに飛びかかり、皆を押さえつけ、打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってその家から逃げ出した。
19:17 このことが、エペソに住むユダヤ人とギリシア人のすべてに知れ渡ったので、みな恐れを抱き、主イエスの名をあがめるようになった。
19:18 そして、信仰に入った人たちが大勢やって来て、自分たちのしていた行為を告白し、明らかにした。
19:19 また魔術を行っていた者たちが多数、その書物を持って来て、皆の前で焼き捨てた。その値段を合計すると、銀貨五万枚になった。
19:20 こうして、主のことばは力強く広まり、勢いを得ていった。 使徒の働き19:13-20新改訳2017』
自称祭司長スケワの7人の息子たちについて
◆パウロの奇跡の模倣(13~14節)
「ところが」は、重要な接続詞です。ギリシア語で「デ」に当たり、英語で、「but」「then」に該当します。この出来事は、創造主である神【主】がパウロを通して行われた良き奇跡との対比になっています。ペテロに起ったのと同じことがパウロにも起っているのです(使徒の働き8:18~19(サマリアの魔術師シモン))。そして、ここでは、パウロの奇跡をコピーしようとする者が現れました。ユダヤ人の巡回魔除け祈祷師の中のある者たちがそれを行ったのです。
「主イエスの名を唱え、」とあります。ユダヤ教の中にも、悪霊の追い出しを行なう者がいました。いわば、当時のユダヤ教カルト教団です。彼らは、イエスの名に魔術的な力が宿っていると誤解していて、イエスの名を唱えただけで、悪霊は出て行くと思っていたのです。おまじないの中で魔術的な名前を唱えることは、当時よく見られた現象です。特にエペソでは、それが活発に行われていたようです。
当時の人々は、ユダヤ人を恐れていました。それは、ユダヤ人が発音しない「神の御名」が、ユダヤ人の力の源であると考えていたことや、「神の御名」がビジネスで成功する秘訣であると考えていたからです。
※ルカ9:49~50では、以下の出来事がありました。
ここでは、12弟子の競争心を暴露した出来事が記されています。イエスの弟子のひとりが、イエスの御名によって悪霊の追い出しをしていたたのです。おそらく、弟子集団の端にいた者か、あるいは、バプテスマのヨハネの弟子であった可能性も考えられます。12使徒たちは、自分たち以外の者がイエスの御名を唱えることに反対しました。しかし、イエスは、「あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方です」 と言われたのです。
エペソでの出来事は、これと根本的に異なります。エペソで主イエスの御名を唱えたのは、不信者たちなのです。
「このようなことをしていたのは、ユダヤ人の祭司長スケワという人の七人の息子たちであった」
ここに出てくるスケワは「自称祭司長」であって、本物ではありません。おそらく、「祭司長」と名乗る方が権威付けになるからでしょう。また、魔術を行っていたので、エルサレムから追放された可能性も考えられます。そして、アジア州を巡る旅で、エペソに来たのかも知れません。
彼らは、悪霊につかれた人の家に行き、ためしに、主イエスの御名によって悪霊を追い出そうとしました。「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる」と言ったのです。
◆悪霊の逆襲(15~16節)
「悪霊につかれている人」は、実際に悪霊につかれていました。悪霊は知的活動をしているのです。
悪霊の応答に出てくる「イエス」と「パウロ」は、定冠詞付です。「the Jesus」と「the Paul」というイメージです。これは、「お前が口にしているイエスとパウロ」という意味があります。ここで、記者のルカは、2つの動詞を使い分けています。イエスに関して「知っている」は、「ギノスコウ」という動詞で、「体験的知識」を意味しています。一方、パウロに関して「知っている」は、「エピスタマイ」という動詞で、「理解している、聞き及んでいる」という意味での知識を意味します。「ギノスコウ」の方が重い意味が含まれています。
(口語訳)は、原典に近く日本語訳ができています。
Act 19:15 すると悪霊がこれに対して言った、「イエスなら自分は知っている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者だ」。
「しかし、おまえたちは何者だ。」というのは、「おまえたち(You)」という言葉に強調点があります。悪霊は、スケアの7人の息子たちを見下しているのです。悪霊は、相手の名前を聞いているのではなく、「何様だと思っているのだ」という意味があるのです。
「皆を押さえつけ、打ち負かしたので、」(新改訳2017)
新改訳聖書では、「ふたりの者を押さえつけて、みなを打ち負かしたので、」と日本語訳されていますが、このギリシャ語は、「アンフォテロン」という言葉が使われ、「ふたり」とも「皆」とも訳せるのです。これは、より良い方向に修正されたと思います。
「生兵法は大怪我の基」ということわざを思い出すようなことが起ったのです。悪霊につかれた人は、超自然的な力を発揮し、反撃しました。7人の悪霊追い出し人は、裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出したのです。彼らは、命が助かっただけも、まだよかった方でしょう。
◆この出来事の結末(17~20節)
この出来事は、エペソに住むユダヤ人とギリシア人の全部に知れ渡り、創造主である神【主】への畏怖の念が湧いてきました。そして、主イエスの御名があがめられる事になりました。当然、多くの者が信仰に入る事になりました。
信者の中から多くの者が、罪の告白をしました。エペソでは、信仰に入ってからも悪習慣との決別が出来ていない傾向がありました。多くの者たちが、黒魔術やオカルトに関わっていたことを白日の下にさらす事になりました。この現象は、魔術と深い係わりのあったエペソならではのものでしょう。
魔術の世界の常識は、「呪文は秘密にしておかなければ効果がなくなる」と言われます。秘密の呪文や呪縛の言葉を手に入れるために、多額の費用を払って、パピルス製の巻き物や書物を買ったりしていたのです。
秘密の呪文を公にしたとたんに、それらの呪文は効力を失いました。効力がなくなった巻き物や書物を所有していても意味がありません。多くの者は、それを群衆が見守る中で焼き捨てたのです。焼き捨てた書物の価値は、銀貨5万枚にも及んだのです。ローマのデナリ銀貨ではなくギリシアのドラクマ銀貨だと推察されています。銀貨5万枚は、5万日の労賃に相当し、1ドラクマを現在の1万円と考えると、5万ドラクマは5億円に相当する事になります。
20節は第6番目の教会成長レポートです。パウロのエペソでの奉仕までがひとくくりになっています。他の教会成長レポートは、使徒の働き2:47、6:7、9:31、12:24、16:5(マケドニア人の幻の箇所)に記されています。
☆パウロの悪霊との対決
記者のルカは、パウロの悪霊との対決を3回記録しています。
一回目は、使徒の働き13:6~12に記されています。第一次伝道旅行において、キプロス島を訪問し、偽預言者でバル・イエスというユダヤ人の魔術師に出会いました。彼は、魔術師エルマとも呼ばれていました。この魔術師エルマは、地方総督セルギオ・パウロを信仰の道から遠ざけようとしたので、パウロが彼を叱責すると、彼の目が見えなくなったのです。これに驚嘆した総督は、信仰に入りました。
二回目は、使徒の働き16:16~18に記されています。第二次伝道旅行で、ピリピを訪問した時に、占いの霊につかれた若い女奴隷の妨害を受けました。それが幾日も続いたので、パウロは彼女から悪霊を追い出しました。悪霊に憑かれた彼女から利益を得ていた主人たちから訴えられたパウロは、投獄されました。しかし、そのことが、看守一家の救いにつながったのです。
三回目は、使徒の働き19:13~20に記されています。第三次伝道旅行において、エペソを訪問した時に、パウロの奇跡を信仰も無いのにコピーしようとする者たちが現れたのです。その顛末は、この項に記されています。
パウロは、三回の伝道旅行それぞれで、悪霊との対決がありました。しかし、パウロは、悪霊との戦いを前面に押し出して伝道しているわけではありません。悪霊から先制攻撃があり、それに対応しているのです。そして、最後は、イエス・キリストが勝利されています。
☆罪や悪習慣との決別
クリスチャンになっても、古いものを捨てきれないことがよくあります。エペソでは、魔術やオカルトの世界から救われた人たちが多くいました。彼らは、かつての悪習慣から抜け出せないでいたのです。つまり、この世(エペソ)の価値観に沿って生きていたのです。この自称祭司長スケアの7人の息子たちのエピソードをきっかけに、彼らは古い生活と決別する決心ができたのです。
信仰者に問われている事を考えてみます(ロマ13:12)。男女関係や性道徳はどうか? 偶像礼拝や占いはどうでしょうか? 拝金主義はどうでしょうか? 交友関係はどうでしょうか?
創造主である神【主】との関係に思いを持ちつつ、より良い人生のための交友関係を整理し、構築して行きたいですね。






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