トラウマについて考える 7
「支援者の傷つき」については、とても大切なテーマです。
良い助言者の役割には、自分の身を守るための準備が欠かせません。これは、経験を積んだベテランになれば不要になるものではなく、経験を積むほど 「見えないリスク」に慎重になる必要があります。
適度な慎重さが「専門性」という表現もできます。
対人援助職では、強いストレスからこころを守る 「こころの防御服」が必要なのです。それは、「知識、援助スキル、チームのサポート、私的な資源 など」さまざまな知見と事例などです。
トラウマ(こころのケガ)をかかえる人と関わることでの影響について考えてみましょう。
・非行や犯罪の行為の詳細を知る
・対象者の被害体験や壮絶な生い立ちを知る
・支援の中で対象者から暴言・暴力、裏切りを体験する
その出来事の内容にショックを受けたり、適切な対応が何かわからなくなったりすることもあります。過度のストレスから、次の要素を感じ、時には、自責に拍車をかけてしまう事も出てきます。
・恐怖・不安:「そんなひどいことが・・・」 「また何かあるかも」
・怒り・不信:「許せない」「本当にわかっているのか・・・?」
・自責・罪悪感: 「守ってあげられなかった」、休日も仕事
・回避:「考えたくない」、話したくない、会いたくない
・コントロール: 「こうしなさい、言うことを聞けばいい」
前のめりになりすぎると、救世主的態度となり、「わたしが助けなければ」、入れ込んでしまいます。
また、支援者自身が、身体的不調を訴え、「疲れがとれない、よく眠れないなど」の状態になることもあります。
このような状態を支援者の二次受傷と表現します。その予防も考えておく必要があります。
「わたしには何もできない」とか、「わたしが何とかしなくっちゃ」、「・・・だれも助けてくれない」という感情です。支援者は、無力感がつのると 「力(チカラ)」を使いたくなるものです。
そうすると「やめなさいと言っただろう」というような支配的な態度になりがちです。
「どうなっても知らないよ」とか、「痛い目をみればいいんだ」、「あいつは、もう無理だ」というような匙を投げるような対応をしてしまいかねません。
人間は、誰でもトラウマ(こころのケガ)を負うものという視点で、常に自分を観察し、自分の状態に気づき、ほどよい休息を取るように心がけたいですね。
野坂祐子オススメの参考文献
『ガスライティングという支配: 関係性におけるトラウマとその回復』 アメリア・ケリー著/野坂祐子訳(2024)日本評論社
『非行少年に対するトラウマインフォームドケア: 修復的司法の理論と実践』J・オウドショーン著,野坂祐子監訳(2023) 明石書店
『子どもへの性暴力 【第2版】 その理解と支援』 藤森和美・野坂祐子編(2023)誠信書房
『性問題行動のある子どもへの対応:治療教育の現場から』 藤岡淳子・野坂祐子・毛利真弓編(2023)誠信書房
『性をはぐくむ親子の対話: この子がおとなになるまでに』 野坂祐子・浅野恭子(2022)日本評論社
『保健室から始めるトラウマインフォームドケア: 子どもの性の課題と支援』野坂祐子・菊池美奈子(2022) 東山書房
『複雑性PTSDの理解と支援: 子ども時代のトラウマを癒すコンパッションとセルフケア』 A・シュワルツ著,野坂祐子訳(2022)金剛出版







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