小アジヤでの伝道禁止が… 使徒の働き16:6-10
『16:6 それから彼らは、アジアでみことばを語ることを聖霊によって禁じられたので、フリュギア・ガラテヤの地方を通って行った。
16:7 こうしてミシアの近くまで来たとき、ビティニアに進もうとしたが、イエスの御霊がそれを許されなかった。
16:8 それでミシアを通って、トロアスに下った。
16:9 その夜、パウロは幻を見た。一人のマケドニア人が立って、「マケドニアに渡って来て、私たちを助けてください」と懇願するのであった。
16:10 パウロがこの幻を見たとき、私たちはただちにマケドニアに渡ることにした。彼らに福音を宣べ伝えるために、神が私たちを召しておられるのだと確信したからである。 使徒の働き16:6-10新改訳2017』
「それから」とあるのは、これまでは、すでに知っていた諸教会での弟子訓練が行われていましたが、ここから、初めて訪問する場所での伝道が始まるのです。それは、小アジア(現在のトルコ西部)での伝道でです。
「彼らは、アジアでみことばを語ることを聖霊によって禁じられたので、」という想定外の導きがありました。パウロは、アジア州(小アジア西部)の首都エペソに向おうとしていました。しかし、西方向への移動が聖霊によって禁じられたのです。
ルカは、聖霊がどのようにして働かれたかは記していません。これによりパウロ一行は、最初の計画を変更せざるを得なくなりました。
「何かをする必要がある」ということと、「それをすべきかどうか」ということは、別問題で、この場合は、まだアジアで伝道するタイミングではなかったということだと理解した方が良さそうです。
それは、エペソでの伝道は約2年後に実現するからです(使徒の働き18:19)。
「フリュギア(フルギア)・ガラテヤの地方を通って行った」とあるのは、ガラテヤ州のフルギア地方のことでしょう。パウロ一行は、進路を北に取りました。黒海南岸沿いを東に移動し、ビテニア地方に行こうとしたのです。
「ミシア(ムシヤ)の近くまで来たとき、ビティニア(ビテニヤ)に進もうとしたが、」
ビテニアは、黒海の南岸地域でで、ローマ世界では重要な交通の要衝の地でした。パウロの計画は、理にかなったものでした。
しかし、「イエスの御霊がそれを許されなかった」のです。今度も、パウロの計画が途中で止められました。
ここでは、「イエスの御霊」という言葉が出て来ます。これは、珍しい用法です(使徒の働きの中ではここだけに出て来る)。ロマ8:9では、「キリストの御霊」という言葉が出て来ます。また、ピリピ1:19では、「イエス・キリストの御霊」という言葉が出て来ます。
これらの用例が示す神学的意味は、「イエスは神である。」そして、「聖霊は、父と子から発する。」、つまり「イエスがパウロの伝道を導く主権者である」と考えられています。
どのようにしてかは記録されていませんが、彼らは再び聖霊によって禁じられました。
ビテニアでの伝道は、後にペテロ(1ペテロ1:1)が行うようになります。
ここには、人間による綿密な計画と聖霊の導きの絶妙なバランスが記されています。第一次伝道旅行では、パウロの計画した通りに伝道が進められました。しかし、第二次伝道旅行では、より厳密な聖霊の導きがあったのです。
「それでミシアを通って、トロアスに下った。」
パウロの伝道計画の基本は、先に進むということです。パウロの思考は、「東に戻るわけにはいかない。」、「西に行くことを禁じられ」、「北に行くことも禁じられ」、「唯一開いている方向は、北西」でした。
その北西に進むと、トロアスに着くのです。そこは、エーゲ海の向こうにギリシアが見える港町で、小アジアとヨーロッパを結ぶ重要な港町です。また、エーゲ海と黒海を結ぶ港町でもあります。トロアスは、古代都市トロイから約40キロ南にあり、パウロは途方に暮れ、これ以上先に進むためには、船に乗るしかないと思ったでしょう。
トロアスに着いて間もなく、パウロは幻を見ました。パウロには自分の計画はなく、神の導きを待っていました。ある夜、幻の中で、ひとりのマケドニア人がパウロの前に立って懇願するのです。
「マケドニアに渡って来て、私たちを助けてください」
この「私たち」という言葉で、マケドニア人であることが分かったようです。マケドニアは、ギリシアの北部、トロアスから真西に位置する地域です。マケドニア人は、ヨーロッパ人でした。つまり、ヨーロッパは、キリストの福音を必要としていたのです。
「私たち」という言葉は、「ここから一人称複数形の主語」になっています。
また、その経緯については記されていませんが、ルカが宣教チームに加わっています。ルカの控え目な性格が反映されているのでしょう。
「私たち」についての「章句」は、使徒の働き16:10~17、20:5~15、21:1~18、27:1~28:16に記され、ルカは、目撃者の視点で記録を残しているのです。
幻を見たのはパウロであるが、宣教チーム全員が神の導きを確信した。
彼らは、ただちにマケドニアに向けて出発しました。この決断は、教会史の中でも特筆すべきものです。これにより、福音は、西回りで全世界に伝えられることになったのです。







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