創造主による選びの民のはじまり アブラハム召命 創世記12:1-3
『【主】はアブラムに言われた。「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」(創世記12:1-3新改訳2017)』
民族や国の成り立ちは、不思議が多くあります。
特に、ユダヤ人ともイスラエル人とも言われる民の歴史こそ、人知には計り知れない不思議が満ち溢れています。
創造主である神の召命とアブラムの信仰による応答によってできたのがイスラエルという選ばれた民です。
その始まりは、アブラハムが、アブラムと名乗っていたカルデアのウルです。ウルは、今のイラク共和国、ユーフラテス川の下流、バビロンの南東240kmに位置します。
アブラムの時代に、下メソポタミア地域の首都として栄え、絶頂期を迎えていたとされています。
最大の特徴は、月神礼拝の中心地でした。神秘的な月の光にチカラを感じ、富と繁栄と快楽をもたらすと、月神ナンナと女神ニンガルを崇拝していました。
そもそも、アブラムの父テラは遊牧民でした。メソポタミア北方の山地で生まれ育ち、ウルに流れ着いたのでした。ノアから三人の息子が生まれ、セム(東洋系人種……黄色人種)、ハム(アフリカ系人種……黒人)、ヤペテ(ヨーロッパ系人種……白人)として増え広がりましたが、アブラムはセム系の子孫に当たります。
そして、商人としてコツコツと努力を重ねその土地に溶け込み、商人として信用を築いていました。それをアブラムが引き継いで、堅実な商売を営んでいました。
アブラムは、異母姉妹のサライと結婚しました。財産の保全と一族の伝統を守ることが目的でもありました。後に、モーセ律法によって禁止されることになります。これが、後々、あちこちで波紋を広げる言動に繋がるのです。
ある日、アブラムは今まで聞いたことが無い声を聞くことになりました。
それが「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。……」からはじまる冒頭の言葉です。
21世紀に生きる私たちは、アブラムからはじまった子孫が増え広がり、国となった歴史を知っています。
しかし、アブラムは、「わたしが示す地へ」と言われただけでした。
彼は、ユダヤ人からは「イスラエル人の父」と呼ばれ、イシュマエルの子孫のイスラム教徒からは「民族の父」と呼ばれ、キリスト教徒からは「信仰の父」という敬称がある。
その点でも、創造主である神の約束に対する彼の信仰が結実し、彼が見上げた空に浮かぶ星の数のように、祝福されたことを私たちが目の当たりにしているのです。
創造主である神の導きは、信仰を持って行動することからはじまります。その時に、すべてを教えてもらえるわけではありません。【主】の呼びかけに応答する信仰が必要なのです。
今と違い、その時代の大移動は、命をかけた危険を伴うものだったでしょう。
ユーフラテスを遡りカランで15年、それから、南下してエジプトまで移動したと記されていますから、先祖から引き継いだ遊牧民のDNAが存分無く発揮されたのかも知れません。
妻のサライは、アブラムに従順でしたが、年齢が進むにつれ焦りを感じていたのでしょう。
それは、跡継ぎの問題でした。
創造主である神は、子孫を星の数ほど与えて下さると約束されたのに、それはまだ果たされていませんでした。不安に感じるのも当然、アブラハムは85歳、サライは75歳だったのですからね。
そこで、サライは女奴隷のハガルとの間に跡継ぎをもうけるようにアブラムに提案をします。アブラムはその提案を受け入れ、アブラムが86歳になったときに、イシュマエルが誕生しました。
当時の慣習では、跡継ぎをもうけるという方法がいくつかあったようですが、決して、認められていない方法ではありませんでした。しかし、それは、創造主である神の約束の子孫ではなかったのです。
アブラム(高く上げられた父)は、アブラハム(多くの者の父)と改名され、サライ(私の王女)はサラ(王女)と改名されました。
創造主である神の約束は、アブラハムが99歳、サラが89歳の時に動き出します。人間的には、妊娠や出産が不可能な領域です。もうダメだと人が感じる時に示されるのが、創造主である神の御業なのです。
アブラハムが100歳、サラが90歳の時に、ようやく創造主である神が約束された子イサクが誕生しました。
アブラハムへの約束は、子孫の一人が誕生したのみで、約束の地もまだ分からないままです。
サラは127歳まで生き、アブラハムは175歳でその生涯の幕を閉じました。
アブラハムの子孫は、イシュマエル、イサクだけではありません。サラ亡き後、ケトラを妻に迎え、6人の子を生んでいます。
アブラハム、イサク、ヤコブとつながるのが、メシアであるイエス・キリストへの本流です。アブラハム契約は、子孫が失敗をしても、不信仰に陥っても、破棄されることがない片務契約です。これは、今も有効なのです。
一方、イシュマエルの子孫もアラブ民族として、繁栄しています。
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